夢追いきのこ

「基本どうでもいいけどたまに深い」をコンセプトに、常にふざけ、時に熱く、きのこの日常で感じたことやふと感じたこと、ときに感じたことや、いつも感じていることを感じるがままに感じる日記

なぜ日本の派遣事業所数は多いのか

お久しぶりです。

 

今日はバカ真面目な記事を書きたいと思います。

 

5ヶ月前に晴れて大学を卒業した僕ですが、その際に提出をした卒業論文を公開したいと思います。人材業界に携わり、肌感で事実に近いと感じたからです。

 

学生時代、こんな記事を見ました。

 

日本は狂ってる 派遣会社の会長=経済戦略会議の委員 | 黄金の金玉を知らないか?

 

やんわりと人材業界に興味を持っていた僕ですが、ディスられようが半端なくちょっと不安になったのを覚えています。卒論を書かないといけないタイミングで、思い出したのがこの記事でした。

 

我々の生活に最も馴染みのあるお店と言っても過言ではないコンビニの数よりも派遣事業所の数の方が多い、この謎を解明しようと。

 

結論、僕が導き出した答えは2つ。

 

・労働者派遣法の変遷による増加

ソフトウェア産業の構造とIT企業の人材不足への対応による増加

 

です。

 

それぞれ、派遣に関する知識と共に見ていきたいと思います。読み終わった頃には人材派遣業について詳しくなっているはず。笑

 

 

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派遣労働と派遣労働者数の推移について

 

まず派遣労働に関して、大きく2つの種類があります。

 

「一般労働者派遣」と「特定労働者派遣」の2つです。

 

「一般労働者派遣」・・・人材派遣会社に登録した求職者が、派遣先企業のニーズに合致して、本人が了解した場合、雇用契約を結び、派遣されます。また、その契約期間のみ人材派遣会社と雇用関係にあります。事業者が一般労働者派遣を行う場合は、厚生労働大臣の許可を受ける必要があります。

 

「特定労働者派遣」・・・労働者が人材派遣会社に正社員、または契約社員として入社し、派遣先企業に派遣されます。派遣会社との雇用関係は退職まで無制限で、中断することはありません。また、こちらも特定労働者派遣を行う場合は厚生労働大臣に届出をする必要がありますが、欠格要件に該当しなければ受理され、厳しい許可基準を満たさなければならない一般労働者派遣事業より、楽に事業を開始できます。

 

 

※2015年の労働者派遣法改正により、2018年9月29日までに両事業が「労働者派遣事業」に一本化されます。

 

ここで重要なのは「特定労働者派遣」事業の参入障壁が低いということです。

 

以下表も参考にして見てください。

 

f:id:DaIKiNoCo3:20170917173325p:plain

(出所:http://www.tokyohaken.net/jigyou/jigyou02.html)

 

次に派遣市場の推移と派遣事業所数の推移を見ていきます。

 

まずは、派遣市場の推移から

 

f:id:DaIKiNoCo3:20170917174008p:plain

(出所:https://www.jassa.jp/keywords/index1.html)

 グラフからもわかるように、1986年に派遣法が施行されて以来、人材派遣の市場が急成長しました。リーマンショックで一度は落ち込んだものの、制定されてから、27年間の間で派遣事業売上高は約26倍に増えています。労働市場や経済情勢の変化、派遣社員・派遣先両方のニーズに法律が対応してきたことが急成長の1つの要因であり、派遣業界の特徴です。

 

次に派遣事業所数の推移を見ていきます。派遣事業を行なっている事業所は毎年「労働者派遣事業報告書」という書類の提出が義務付けられています。以下グラフは、その報告書を元に作成した派遣事業所数の推移です。

 

f:id:DaIKiNoCo3:20170917174945p:plain

(出所:http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/

 

2000年からのグラフになるが、まず派遣事業所数の合計について、このグラフから読み取れることは、2004年度から急激に数が増え、リーマンショックのあった2008年に数が安定しだしていることがわかります。次に一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業についてそれぞれ見ていきます。まず、特定労働者派遣事業の派遣事業所数について、2004年を境に急激に数が増え続けていることがわかります。また一般労働者派遣事業所数よりも極めて数が多いことがわかります。次に一般労働者派遣事業の派遣事業所数について、同様に2004年から数が増えていますが、2008年のリーマンショックを境に減っていることがわかります。1つの境となっている2004年は、法律により禁止されていて製造業務の派遣が解禁された年です。

 

次に、報告書を提出した派遣事業所のうち、実績のあった派遣事業所の数を見ていきます。さらに、報告書を提出した派遣事業所数のうち、実績のあった派遣事業所数はどれくらいの割合があるのか、実績のあった派遣事業所数から報告書を提出した派遣事業所数で割ってグラフにしました。

 

f:id:DaIKiNoCo3:20170917175640p:plain

f:id:DaIKiNoCo3:20170917175648p:plain

 

のグラフから読み取れることは、特定労働者派遣事業について、実績を出した事業所の年別割合をみると、どの年も一般労働者派遣事業の割合よりも2割ほど低く、2008年のリーマンショック以降、下がり続けていることがわかる。また、報告書を提出し、人材派遣を認められている事業所であるのに、一般労働者派遣事業は平均して約23%、特定労働者派遣事業は平均して約45%、全体で見ると約37%の事業所は派遣を行なっていないことがわかる。

 

では次に、年別の「労働者派遣事業報告書」を元に、職業別の派遣者数の推移を見ていきます。後で詳しく説明しますが、まずは派遣が許された業務について年代別にまとめます。労働者派遣法が施行された1986年から1996年までは政令で定められた16業務、1996年からは、対象業務が26業務に拡大され、1999年からポジティブリスト方式からネガティブリスト方式に変わったため、政令で定められた26業務以外のネガティブリストに定められていない業務も派遣可能になりました。2004年からは禁止されていた製造業務の派遣が解禁され、2012年からは政令で定められた業務が26業務から28業務へと整頓されます。

年別の「労働者派遣事業報告書」では、平成12年度のものから確認ができ、また職業別の派遣労働者数は、政令で定められている26業務(2012年からは28業務)と製造業務に関して、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業に分けて確認ができました。まずは、政令で定められている26業務(2012年からは28業務)から見ていきます。

 

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この2つのグラフから読み取れることは、

 

・一般労働者派遣事業の業務別派遣労働者数については極めて「事務用機器操作」の項目が多いこと

 

・特定労働者派遣事業の業務別派遣労働者数について、「ソフトウェア開発」の項目が1番多く、また2004年の法律改正により急激に伸びていること

 

先ほど述べたように、事業所数に関して極めて特定労働者事業の方が多く、なお事業所数の推移に関しても伸び率は一般労働者派遣事業よりも極めて高いです。以上より、派遣事業所数が多い1つの大きな要因として「ソフトウェア開発」の領域が関わっていると考えられます。

 

念のため、2004年から解禁された製造業務に関する派遣労働者数の推移も見ていきます。

 

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このグラフから分かることは、

 

・製造業務において特定労働者派遣事業よりも一般労働者派遣事業で派遣された派遣労働者数が多いこと

 

・2008年のリーマンショックの影響で一気に数が激減していること

 

これは、当時問題になっていた「派遣切り」が顕著にわかるデータですね。

また、派遣事業所数の推移において、2004年から2008年における一般労働者派遣事業の伸びは、このグラフからわかるように、製造業務が貢献しています。

 

これまでのおさらい...

 

・2004年から2008年にかけて急激に派遣市場が伸びたこと

 

・派遣労働には一般労働者派遣と特定労働者派遣の2種類があり、両方とも許可もしくは申請が必要だが、特定労働者派遣事業の方は許可を取るのが簡単で、会社にとっては参入障壁が低いこと

 

・申請を出している事業所の中で実績を出している事業所と実績を出していない事業所があり、一般労働者派遣事業を行ってる事業所は平均して23%、特定労働者派遣事業を行っている事業所は平均して45%、全体で平均して35%の事業所が実績を出していなく、派遣を行っていないということ

 

・職業別の派遣者数の推移に関して、一般労働者派遣事業は、「事務用機器操作」が一番多く、特定労働者派遣事業は、「ソフトウェア開発」が一番多く、なお2004年から2008年にかけて急増していること

 

・製造業務に関する派遣労働者数に関して、2004年から2008年にかけて特定労働者派遣事業派遣労働者もなだらかに増えてはいるが、特に一般労働者派遣事業派遣労働者数が急増し、2009年には激減したこと

 

それぞれ重要な要素になるので、抑えておくと良いでしょう。

 

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 労働者派遣法の変遷

 

次に派遣事業に置ける大きな役割を果たしている派遣労働法の改正がどのように派遣事業所数及び派遣労働者数の推移に影響を与えているのかを見ていきます。

 

1986年に労働者派遣法が施行されて以来、人材派遣の市場が急成長しました。リーマンショックで一度は落ち込んだものの、制定されてから、27年間の間で派遣事業売上高は約26倍に増えています。労働市場や経済情勢の変化、派遣社員・派遣先両方のニーズに法律が対応してきたことが急成長の1つの要因であり、派遣業界の特徴です。これまでの間、どのように法律が変わっていったのかを時系列で見ていきます。

 

1986年 労働派遣法施行

派遣できる業務を定め、それ以外は派遣できないとする業務範囲「ポジティブリスト方式」を採用。対象業務は16業務。

 

1996年 対象業務を16業務から26業務に拡大

 

1999年 派遣対象業務の拡大

ポジティブリスト方式から、禁止するものを指定する「ネガティブリスト方式」に変更。

 

  • 対象業務の原則自由化(ネガティブリスト方式)
  • 自由化業務についての受け入れ期間の制限(最長1年)
  • 受け入れ期間制限を担保する制度(接触日の事前通知、派遣停止の通知等)
  • 自由化業務について、雇入努力義務や違法な場合の雇入れ勧告等の創設

 

ネガティブリストの具体的な内容

  • 港湾運送業務・・・船内荷役、はしけ運送、沿岸荷役、いかだ運送等
  • 建設業務(単純労働分野)・・・土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体の作業とこれらの準備作業
  • 整備業務
  • 病院等における医療関係業務(紹介予定派遣の場合と社会福祉施設勤務、産休、育児休業、介護休業代替、へき地勤務を除く)

 

なお以下、医療関係業務は、次の範囲で行われる場合に限り、派遣できないことになっている。

医療法に規定する病院/身体障害者福祉法に規定する身体障害者療養施設に設けられた診療所等を除く診療所/同胞に規定する助産所/介護保険法に規定する介護老人保健施設/医療を受ける者の居宅で行われるもの

 

・医師、歯科医師の業務

・薬剤師の業務

保健師助産師、准看護師の業務である保健指導、助産、療養上の世話と診断の補助

・管理栄養士の業務(傷病者の療養のために必要な栄養指導に限る)

・歯科衛生士、歯科技工士の業務

放射線技師の業務

 

2000年 紹介予定派遣解禁

 

2004年 自由化業務の派遣期間を3年に延長、さらに政令26業務の派遣期間が無制限に

  • これまで禁止されていた製造業務の派遣解禁(派遣受け入れ期間は最長1年間)
  • 紹介予定派遣の法制化と緩和

 

2006年 医療関係業務の一部で派遣解禁

 

2007年 製造派遣の派遣期間を3年に延長

 

2012年 派遣法の改定

  • 政令26業務が28業務に整頓される
  • 事業規制を強化
  • 日雇い派遣の原則廃止
  • グループ企業内派遣の規制
  • 離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止
  • 派遣料金と派遣賃金の差額(マージン)等の情報公開を義務化

 

2015年 派遣法の改定

 

以上から判断をすると、規制の流れに関して1986年から1996年の間は限定的運用がなされ、1996年から2008年、リーマンショックまでの間は経済・産業構造の変化や価値観の多様化に伴う企業や労働者の多様な働き方に対応すべく次第に規制緩和されていったが、リーマンショックを境に規制強化が行われていったことがわかります。リーマンショックを境に規制が強化されていったのは、大手企業を中心に派遣労働者を雇用調整のために優先的に解雇する「派遣切り」が社会問題になったためです。

 

では上記法改正がどのように2000年~2014年の間の派遣事業所数及び派遣労働者数の推移に影響を与えていったのかを見ていきましょう。

まず、法改正及び経済情勢のポイントとなる年を確認します。2000年以降、ポイントなる年は、

 

2004年・・・政令26業務の派遣期間が無制限になり、さらに禁止されていた製造業務の派遣業務が解禁された年

 

2007年・・・製造業務の派遣期間が1年間から3年間に延長された年

 

2008年・・・法改正とは別で、世界経済に大きな影響を与えたリーマンショックがあった年

 

2012年・・・事業規制を強化し、日雇い派遣の原則廃止など、規制強化に乗り出した派遣法の改正があった年

 

以下、2000~2003年、2004~2008年、2009~2014年の3つの年代に分けて、派遣事業所数及び派遣労働者数の推移を見ていきます。

 

2000~2003年の派遣事業所数及び派遣労働者数の推移

 

この年代の特徴は、1999年の法改正により、派遣が可能とされる派遣対象業務を指定するポジティブリスト方式から、禁止するものを指定するネガティブリスト方式に変更されたことが影響し、緩やかに派遣事業所数及び派遣労働者数が伸びていることです。

2000年から2003年にかけて報告書を提出した派遣事業所数の増加率は、一般労働者派遣事業で約91%、特定労働者派遣事業で約45%、全体で約63%となっています。また派遣労働者数の推移に関して、政令で定められた26業務合計の労働者の増加率は、一般労働者派遣事業で約35%、特定労働者派遣事業で約10%、全体で約31%となっています。

 

2004~2008年の派遣事業所数及び派遣労働者数の推移

 

この年代の特徴は、派遣事業所数及び派遣労働者数が他の年代と比べて急激な増加をしている点です。その要因として考えられることは2004年の法改正により、製造業務への派遣が解禁されたこと、また政令26業務の派遣期間が無制限になったことが挙げられます。

2004年から2008年にかけて報告書を提出した派遣事業所数の増加率は、一般労働者派遣事業で約163%、特定労働者派遣事業で約282%、全体で約228%となっています。次に2004年から2008年にかけての派遣労働者数の推移に関して、政令で定められた26業務合計の労働者数の増加率は、一般労働者派遣事業で約51%、特定労働者派遣事業で約116%、全体で約58%となっています。なお、特定労働者派遣事業の増加率について、派遣事業所数及び26業務合計の労働者数の推移は一般労働者派遣事業に比べて圧倒的に多いです。特に、「ソフトウェア開発」について、2004年から2008年にかけての増加率は約172%と極めて高いパーセンテージを示しています。

最後に2005年から2008年にかけての製造業務に従事した派遣労働者数の増加率は、一般労働者派遣事業で約690%、特定労働者派遣事業で約785%、全体で約701%となっています(2004年に派製造業務の派遣が解禁されたため、2004年のデータはございません。したがって、2005年からの増加率となります)。

 

2009~2014年の派遣事業所数及び派遣労働者数の推移

 

この年代の特徴は、2008年に起きたリーマンショックの影響で派遣事業所数の推移、および派遣労働者数の推移の増加が止まる、もしくは減少している点です。リーマンショック以降派遣切りが問題となり、法律は規制強化の流れとなります。2012年には本格的に法が改正されたことにより、両方の推移の増加にも歯止めをかけています。しかし、派遣事業所数の推移に関して、特定労働者派遣事業の事業所数が増えているため、全体の数字もそれに後押しされ少し伸びています。一方で実績のあった派遣事業所数を見てみると、報告書を提出した派遣事業所数の伸びに関係なく伸びていません。そのため、実績を出した事業所の年別割合を見てみると特定労働者派遣事業の割合が減っていることがわかります。

2009年から2014年にかけて報告書を提出した派遣事業所数の増加率は、一般労働者派遣事業で約-22%、特定労働者派遣事業で約16%、全体で約4%となっています。次に2009年から2014年にかけての派遣労働者数の推移に関して、政令で定められた26業務(2012年から28業務)合計の労働者数の増加率は、一般労働者派遣事業で約-53%、特定労働者派遣事業で約-4%、全体で約-45%となっています。

最後に2009年から2014年にかけての製造業務に従事した派遣労働者数の増加率は、一般労働者派遣事業で約5%、特定労働者派遣事業で約13%、全体で約7%となっています。また、リーマンショックが起きた2008年から次年度の2009年の間の増加率は、一般労働者派遣事業で約-58%、特定労働者派遣事業で約-35%、全体で約-54%と急激に減っていることがわかります。

 

以上のことより、法律の変遷から考えられる派遣事業所が増えた理由は主に2点。

 

・1999年および2004年における法改正により、規制緩和の動きが加速し、政令26業務の派遣期間が無制限になったことなどが影響し、参入企業が増えたため

 

・2004年の法改正の一つ、製造業務の派遣解禁により、製造業務の派遣事業所が増えたため

 

前の章で確認した通り、特定労働者派遣事業は一般労働者派遣事業よりも極めて参入障壁が低いため、このことも特定労働者派遣事業所数が増えたことに関係してきます。また特に2004年から2008年にかけての特定労働者派遣事業所の増加率が282%と極めて高い。その大きな要因として考えられるのは「ソウトウェア開発」です。最後にソフトウェア産業の構造とエンジニアの人材不足に対する企業の対応を確認し、なぜここまで「ソフトウェア開発」が急増したのかを明らかにしていきます。

 

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ソフトウェア産業の構造とエンジニアの人材不足について

 

最後に特定労働派遣事業の業務別の派遣労働者数の「ソフトウェア開発」の2004年から2008年にかけて急増した原因に関して、情報サービス産業の市場の成長と、ソフトウェア産業の構造と、IT企業の人材不足問題に関して見ていきましょう。

まあそろそろ飽きる頃でしょうから簡単に。笑

 

まずソフトウェア産業が含まれている情報サービス産業の市場の成長について、以下グラフを。

 

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まあシンプルに伸びているなと。笑

 

次にソフトウェア産業の取引構造の特徴についてですが、以下2つの特徴があります。

 

・中小規模性が強いこと

 

・重層構造であること

 

これは業界に携わっている人ならピンとくるかもしれません。

詳しく知りたい方は以下論文を参考にして見てください。

 

松下隆(2010)「受託ソフトウェア産業の取引構造と存立基盤の変化−中小エンタプライズ系ソフトウェア業から組込み系への多角化を視点として−」大阪府立産業開発研究所。

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/1949/00103312/ronsyu22-02.pdf

 

峰滝和典・元橋一之(2008)「ソフトウェア産業の重層的下請構造:イノベーションと生産性に関する実証分析」独立行政法人経済産業研究所

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/09j002.pdf

 

最後にITエンジニアの人材不足に関して、以下グラフを見てください。

 

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2007年から2014年までのデータになるが、最大で87.4%の企業がIT人材に関して不足していると回答をしています。自分がITの領域における人材サービスをしていても、これは肌で感じること。IT業界に関わっている人であれば異論はないでしょう。

 

ではこの人材不足に対して、企業はどのように対応していたのか。

 

IT業界では、IT技術者の慢性的な不足から、下請け企業となる中小規模のシステムインテグレーターソフトハウスから、人材を調達することが多く、また下請け企業も自社の人材だけでは要望に応えられないケースが多いため、さらなる下請け企業から人材を確保しようとします。しかし、この人材の確保で問題視されていることが2点あります。

 

職業安定法第44条に定める「労働者共有事業の禁止」への抵触

 

・労働者派遣法の「二重派遣の禁止」への抵触

 

上記2点の法令は、労働者の指揮命令系統が曖昧になることで労働環境が悪化することや、中間搾取が行われて労働者に不利益が生じることを懸念して制定されているものでです。

 

では、この法令を守ることを前提に、どのようにして下請け企業から人材を確保すればよいのか。その最適な方法と考えられたのが、特定労働者派遣事業なのです。

 

以上のことより、特定労働者派遣事業の「ソフトウェア開発」の従業員者数及び派遣事業所数が増えた理由は2点。

 

・情報サービス産業市場の成長及び従業者数が増大したため

 

・エンジニアの人材不足により、互いの事業所が人材の調達を行なっているため

 

人材の調達手段の一つとして特定労働者派遣事業が利用されました。また、ソフトウェア産業は、重層構造および中小規模性が強いため、小規模な事業所が多数存在しています。それぞれの事業所がエンジニア不足の事業所に派遣をするため、万が一に備え特定労働者派遣事業の申請を出します。それが、ある種の当たり前となり、ソフトウェア開発事業が主ではあるが、名目上で派遣業も営むような事業所が急激に増えたのです。ある種の当たり前と表現したのは、特定労働者派遣事業の事業所で実績を出していない事業所が平均して45%存在しているから。元請け企業から依頼された案件に対し、必要な人材を確保できれば派遣をする必要はありません。それが重層構造的に行われ、なおかつ一つ一つの事業所の従業者数が少ないとなると、特定労働者派遣事業における「ソフトウェア開発」の従業員者数および派遣事業所数が次第に増えていくことは明らかでしょう。

 

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まとめ

ということで、最初に戻りますが、私が「なぜ日本の派遣事業所数が多いのか」という問いに出した答えは2つ。

 

・労働者派遣法の変遷による増加

ソフトウェア産業の構造とIT企業の人材不足への対応による増加

 

です。

「日本の」と言っておきながら、諸外国の派遣事情について一切触れていないので、というか一切調べられていないので、本当の理由か定かではありません。あくまでも学生時代に調べたことですので、甘めに見てやってください。笑

最初紹介をした記事はリーマンショック前までのデータとなり、急増した部分のみを取り上げていましたが、その後の経過を踏まえると派遣事業所数の伸びも派遣市場の伸びもいまいちです。これから法律も代わり、規制が厳しくなる動きなので、次第にその数は減っていくと思いますが、IT業界は伸びていき、IT人材の不足は深刻さを増すことでしょう。現在様々な働き方が注目されてきている中で、「IT人材の不足」にどのように対応していくのか、人材会社・IT企業には試されているところです。

 

その他参考文献

株式会社ディップ「派遣法の歴史」

http://www.hatarako.net/contents/law/history/(2017年9月24日閲覧)。

小林美希「派遣会社の『名ばかり正社員』悪労働環境に苦しむ特定派遣が急増中」

http://diamond.jp/articles/-/6304(2017年9月24日閲覧)。

小林亮介/日本ニアショア開発推進機構「『偽装請負問題』が、再びIT業界にやってくる」

http://www.nearshore.or.jp/report-itgisou/(2017年9月24日閲覧)。

土岐優美「最新人材ビジネスの動向とカラクリがよ〜くわかる本」秀和システム

情報サービス産業協会(2016)「情報サービス業 売上高、従業員者数(平成26年)・年間推移(2004-2014)等」情報サービス産業協会。

 

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